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中 竜大様(2006年 物理科学科卒・現東邦大学講師)の寄稿文を紹介いたします。

2021年11月22日(月)
               「ニュートリノ超光速度問題」から学んだこと
     

  私は、2005年度立命館大学理工学部物理科学科を卒業し、その後、名古屋大学大学院理学研究科素粒子宇宙物理学専攻へ進学し、博士号を取得しました。それからアカデミアという環境の魅力にひかれて、今現在も大学教員として物理学の最前線に居ります。
 立命館大学時代、もともと宇宙物理学や素粒子物理学をやりたくて福山武志教授の研究室(福山研究室)で素粒子論・宇宙論の基礎を学びました。もともと理論物理学にあこがれを持っていましたが、実際に自分で実験観測を行い、現象を理解したいという思いから(理論物理を研究としてやれるだけの力量がないということとを実感していたというのもありますが)、大学院は素粒子物理学の実験を行うため名古屋大学大学院に進学しました。特に、私は素粒子と宇宙の両方への興味から特に初期宇宙における宇宙の構造形成に強い関心があり、その中で最も重要なテーマである宇宙における「暗黒物質問題」に関する実験的研究を進めております。
名古屋大学に在籍時、私の主要な研究ではありませんでしたが、OPERA実験というニュートリノ振動実験に参加して(させられて)いました。この実験は、ニュートリノ振動という現象によってミューニュートリノからタウニュートリノへ量子力学的状態が移り変わる現象を直接検出することを目的としたもので、スーパーカミオカンデで最初に指摘したニュートリノ振動に関する直接検証というのが主要な目的でした。しかし、2010年、非常にざわつく結果が出されました。主目的であるニュートリノ振動の結果ではではなく、バイプロとしてのニュートリノの速度の測定についてです。
これは、技術的に非常に面白い測定で、GPSの技術を用いてニュートリノが発射された時間と到着した時間を精密に測定し、その間の距離との関係からニュートリノの速度を測るというものでした。そして、その測定を中心で行っていたフランスのチームが、ニュートリノの速度が光よりも速いかもしれないという結果を出したのです。OPERAグループ内がかなりざわつきました。そこから、ワーキンググループがつくられ、精密に結果の精査がなされました。しかし、なかなか問題点がみつからず、プレス発表することになったのです。その時のニュースを覚えておられる方も多いかもしれませんが、当然、光速度より速い速度で粒子が飛ぶことは特殊相対性理論から禁止されるわけですから、もしそれが本当であれば大発見です。しかし、その後、重大な実験上のミスが見つかり、結局ニュートリノは光速度と矛盾ない速度であるという結果で落ち着きました。その時の詳細をここで色々と話すつもりはないのですが、私にとってこの出来事は、それからの研究者としての意識を大きく変える出来事でした。
 引き続き、中竜大様の「ニュートリノ超光速度問題」から学んだことについての寄稿文は、12月発行の「すうぶつ会誌No,22」にて、さらに詳しく記載されています。ぜひ、ご覧ください。
 
 
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